地下足袋山中考 NO1
<観光振興計画、ゴンドラ、内陸線、北空港の行方>

 北秋田市観光振興策定委員会が今年18日に始まった。旧4町合併から6年目を迎えた遅ればせながらの作業ではあるが、10人の策定委員が3回の会合を重ねた成案が間もなく公表されるであろう。当協会からは加藤理事長が策定委員として参加し、昨年4月に市に提案した「環森吉山観光基本構想」を軸に、全体のコーディネート、全国と勝負できうる観光素材の位置付け、プレゼン作業の重要性を主張。予算を担保した具体的なアクションプランを期待したい▲振興策を作っても実態は深刻だ。北秋田市観光公社は資金ショートし、市の主導でマタギの里観光()が吸収したが、その本体経営も綱渡り状態と聞く。市が所管する多くの観光施設の運営は指定管理料が命綱の実態が浮き彫り▲森吉山観光はゴンドラ観光に執着しすぎだ。果たしてあり余る宝を活かしきれているのか。特にシーズンスタートは、知床や東北各地の観光道路はすべてゴールデンウイーク前に除雪と安全点検が完了し開通スタンバイなのに奥阿仁・奥森吉はどうか。除雪は若葉の頃もとっくに過ぎた61日に標準を合わせた始動である。毎年510日前後はノロ川の水芭蕉群落が見ごろになり芽吹きが始まる。しかし森吉山荘の分岐から先は通行止めで入れない。市の観光担当に聞くと5月いっぱいは雪崩と落石のため通行禁止だという。果たしてそうか、雪崩個所など皆無である。落石は常時処理すべし。毎年のお決まり文句で森吉山荘の1か月分の売上が皆無となる。5月いっぱいお客様はお断りしますということか。観光振興計画云々以前の問題である▲ゴンドラ運行の経営主体はすでに撤退し、地元NPO法人が県・市の補助金頼りに迷走運行。新NPO法人の設立が浮上しているが、寄付行為と会費が原資のNPO法人運営では無理がある。スキー場やゴンドラ運行は経済効果を追求する収益事業であり株式会社経営が本来の姿だ。問題は将来的な施設維持管理費の捻出が鍵となる。資金がなければ施設を使えるだけ使いきって幕を閉じることになる。市が体育館や他のスポーツ施設の維持管理同様にスキー場施設を引受ければ話は別だがハードルはあまりにも高い。森吉山観光におけるゴンドラの役割について考察する必要が出てきた▲存続が危ぶまれた秋田内陸線は、40を超える支援団体の熱意が実り、212日に開業20周年記念式典を開催。県、北秋田市、仙北市、秋田内陸縦貫鉄道()の4者が存続合意書を交わし新たな船出をした。当初の60万人乗車目標は削除し、二次アクセスを整備する実証事業に取組む、とした4者合意により懸案の安全対策工事への道が開かれた▲何れにしても沿線の人口減少が加速する中、住民乗車運動による公共交通機関の維持云々論は大義名分に留めるとして、それに代わる観光客の上積み策が急務である。車内には観光情報の素材も気配も無く、車内放送の観光案内は聞き取りにくいのが気になる。目指す沿線ツーリズムの終着駅がまだ見えてこない▲内陸線が安堵と思いきや全日空が大館能代空港〜大阪(伊丹1便)12月末に、日本航空は秋田〜名古屋(小牧2便)2月末で廃止する合理化計画を28日に表明。全廃になれば本県から関西への路線は秋田〜名古屋(中部)を残し消滅する。秋田自動車道、新幹線こまち開業に続き大館能代空港が相次いで開業し秋田県の高速交通体系の進展を愛でたのが12年前。一空港会社の再建問題が過疎県の交通インフラを直撃することになった。▲この島国に100もの空港が存在することの問題意識に乏しかったが、利便性が良くなれば100の需要競争にさらされるということか。地元経済・観光衰退の種は尽きまじ。 (2010.4.1